プロローグ(亜矢子1)

「どうしてこんなことになってしまっているんだろう…」
亜矢子は途方に暮れていた。

亜矢子は地方の田舎出身で、自営業の家庭で厳しく育てられた。

どこで何をしていても、誰と遊んでいても、すぐに両親の耳に入るようなド田舎だ。

食事中は大概父と母、義母で仕事の段取りなどの会話をしていて、
口を開くと邪魔をするなと叱られるし、黙って聞いているしかなく、家族で囲む食事が楽しいと感じたことは一度もない。

父はかなり短気で、小学生の頃は何に怒られているのか分からないまま平手打ちをされたこともある。

一緒に住んでいる祖母は亜矢子の目から見てもかなりエッジが効いており、
母は苦労していて、随分早いうちから白髪だらけになってしまっている。

婚活的な視点で言うならば、

こんな祖母がいる家には絶対に嫁ぎたくないし、
何なら義両親と同居の時点で無理だし、

父みたいな短気な男性とも結婚したくないし、
そもそも大きな声を出したり、物に怒りをぶつける男性も怖い。

母のような女性には憧れるが、母の様に苦労したくはない。

 

ないないだらけになっているのは、最近うっすら気付いてはいるけれど、
じゃあ何をすればいいのかも分からない。

婚活アドバイザーに言われた言葉が脳裏をよぎる。

「亜矢子さんは本当に結婚したいですか?」

私は本当に結婚したいんだろうか。

こんなに頑張ってるのにな…

自然と涙が出て来た…

(続く)