亜矢子その2

「女の子は可愛く、愛想よく。気が回ることが大事なのよ」

昔から母に言われ続けた言葉だ。

婚活アドバイザー曰く、私は目力も一つ一つの言葉も強すぎるし、
愛想の悪さも天下一品らしい。

昔は愛想よく出来たはずなのに、どうしてなんだろう。
それとも昔から男性には愛想が悪かったんだろうか…。

そもそもこの大都会東京では、電車の中で笑顔でなんていたらストーカーに遭う確率を上げるようなものだ。

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正直、母は男女で子育ての仕方はまったく違った。

兄は何もしなくても許されるのに、私は能動的に動かないと怒られた。

田舎の実家に帰省しても、
兄は濡れた洗濯物があっても、床に転がってお昼寝をしている。

なんだか無性に腹が立ってくる。

床で気持ちよさそうに寝ている兄に何も言えない自分にも嫌気が刺す。

でも私は言えないのだ。

「手伝って」と言えばやってくれるだろうけど、兄はきっとものすごく嫌な顔をする。大きくため息をつかれる。

兄は家事をしなくてもいい、と育てられているから「どうして俺がやらないといけないの?」という空気感を出してくる。

私はそこに途中になっている家事があったら放っておけない状態が染みついていると言うのに。

結婚して専業主婦になったら、きっと家事はうまく回せる。

だけど、兄みたいに俺ルールの空気を醸し出してくる男性はムリだ。
私は言い返せない。

仕事は忙しくて、帰宅が22時を過ぎることもある。
年収はようやく400万円台になった。

今これだけ頑張って仕事してこの金額なのだ。
私がこれ以上稼ぐイメージはできないから、どうしたって男性には稼いできて欲しい。

お相手の年収が高ければ高い程、幸せになれるような気がするし、
自分と同じ金額しか稼げない男性は将来が不安。

どこかに私を溺愛してくれて、働いても働かなくてもいいよって言ってくれる穏やかで甘やかしてくれる男性いないかな…

いないんだろうけど、希望を持つのは自由だよね。

私、こんなに頑張ってるんだよ?

神様を恨みたくなることがある。

(続く)